訪問時期:2020年3月

寡聞ながら「箱根本箱」というホテルがあるのを知ったのはつい最近。雑誌「Pen」2020年3/1号を見ていて、斬新なブックホテルがあるじゃないか、と知りました。ちなみにPenはKindle Unlimitedだと読み放題で素晴らしいですね。Pen 2020年3/1号は箱根本箱以外にも興味深い宿が続出していました。

箱根は私の自宅から割と近いのですけど、近いがゆえか、今まで行ったことはありませんでした。人生で初の箱根です。タイムズカーシェアを利用して自宅から自動車でいくことにしました。私は自動車を所持していませんが、タイムズカーシェアは自宅のすぐそばにあって非常に便利です。

小田急線のロマンスカーで箱根湯本まで行き、そこから箱根登山鉄道で行くのが一般的な行き方ですが、2019年の台風の影響で、箱根湯本から先は「代行バス」の運行になっているとのこと。それも自動車で行くことにした理由の一つですね。

それにしても自宅から自動車での旅行はかなり深圳、もとい新鮮!です。いつも空港までリムジンバスで行って、飛行機に乗って、みたいな旅ばかりでしたので。

箱根本箱を地図で見るとこのあたりです。強羅の近辺です。近くにはハイアット・リージェンシー箱根があります。土地勘はないのですが、カーナビが大活躍してくれました。高速道路では先日入手したばかりのETCカードが大役立ちです。

Bluetoothスピーカーを持ち込んで音楽を聞きながら高速道路を運転していると、クルマの旅も気分爽快で良いなとは思います。ただ、運転に集中するので、移動中の車窓を楽しめたり、本を読んだりするのは出来ないですよね。

さて、箱根本箱の入り口に到着しました。

車ですので、坂道を苦もなくのぼっていきました。箱根は坂が多いので徒歩でキャリーバッグ転がすのは大変かもしれませんね。車だとトランクに詰め込んで楽ちんです。

なお、強羅ではケーブルカーも走っておりません。ケーブルカーの代行バスの中強羅駅の停留所が箱根本箱の目の前にあります。箱根本箱は代行バスのほうがアクセス便利そうでした。

箱根本箱の目の前の道路の様子です。商店と飲食店が見えますが、基本的に周囲にはお店はあまりないと思ったほうが良いです。ホテル内で完結することをイメージしましょう。

箱根本箱の敷地内です。駐車場から緩やかな坂を登っていくと入り口があります。

チェックイン時に受付で、おしぼり、お茶、菓子のサービスをいただきました。運転の疲れを癒やしてくれます。おしぼりは使用してたので、写真には写っていませんけど。

ちなみに私が到着したのは17時頃だったのですけど、他の宿泊客の皆様は箱根本箱を存分に楽しむために、もっと早い時間からやって来るようです。15時からチェックイン可能なので、その頃にやって来るのでしょうか。

箱根本箱には大量の本と見どころがあります。籠もる時間を確保するためにも、確かに早めのチェックインがオススメです。さすればより楽しめるでしょう。

部屋の様子です。

グリーンビュー リラックスツインという部屋です。スタッフが部屋まで誘導してくれて、館内や部屋について説明してくれます。

ベッドのアップです。ベッドの上で本を読めるように、枕の上にクッションがついています。写真では枕は布団に隠れています。

ベッドの上に置いてある、ミニトートとルームウェアです。このルームウェアが箱根本箱の正装です。このスウェットみたいなルームウェアを着て、レストランに行くことは全然OKとのことです。最初にスタッフから説明を受けます。

で、こちらのルームウェア、とても着心地良いです。1Fのショップで販売されており、買っていこうかと思うくらい。

ミニトートには館内の本を入れて持ち運んだりできます。こちらもかなり有用です。しかも、記念にミニトートは持ち帰ることが可能!。ええ、持ち帰りましたよ。

ベッドの横のサイドテーブルにはテーマに沿って本が置かれています。宿泊した部屋は冒険や科学がテーマだったのでしょうか。ジュール・ベルヌ「十五少年漂流記」、スウェン・ヘディン「さまよえる湖」」などが置かれていました。

私が気になって読んでたのは、「サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か」という本でした。さすがに全部は読めず、1章分くらい。

サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か
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ベッドサイドの本のセレクションには選者がいて、本にそれぞれコメントがついている冊子も置いてありました。

割と大きなテーブルもありますが、ルームサービスなどはないし、特に使いませんでしたが、物を置くのに便利でした。ノートPCでの作業とかに有用そうです。

iPadがあります。これで受付に電話などできるようですけど、使いませんでした。下段には冷蔵庫があります。

冷蔵庫の中には、ミネラルウォーター、烏龍茶、自遊人のオレンジジュースが入っています。全て無料だそうです。

ルームウェアはここにもあります。カーディガンっぽい形状なので寒いときに羽織る用途ですかね。館内は空調が管理されて暖かいので、薄着でも寒くはないです。

ライトをつけ忘れましたけど、ベランダに面したシャワールームです。露天風呂にドア一枚で直結してるので、シャワーを浴びたあと、露天風呂にいけます。

露天風呂です。24時間全自動で温度調節されています。

3月だから露天風呂は寒いと思いきや、そばにあるシャワーで温まってから、風呂に入ればそんなに寒くなかったです。

ベランダの椅子は寒いのでさすがに利用しませんでしたが。

さて、館内を散策します。

コンクリート打ちっぱなし的な壁がモダンです。

建物の中央にシンボルマークとでも言うべき巨大な本棚があります。

この巨大な本棚には隙間に入り込めるスペースが至るところにあって、その中で本を読むことができます。

最初、他人が本棚に入り込んでるのを見たとき、奇怪な光景に思えたのですが、実際に自分で入ってみると実に落ち着くことができることに気づきました。

本棚は1階と2階を貫いています。

中二階から本棚を見ると、正面に隙間があります。

隙間に近づくとこんな感じです。土足厳禁で、靴を脱いでお上がりくださいとのこと。

隙間から階段を登って上のスペースにいきます。クッションが敷かれててゴロゴロしながら本を読んだりできます。これはかなり快適な状態です。箱根本箱のルームウェアを着ていれば最大限リラックスできます。

上のスペースから見る景色はこんな感じです。いい眺めです。自分が空間の一部になった感が半端ないですね。

中央の本棚以外にも、客室の廊下などにもちょっとした空間があります。もちろんその空間には本が必ず置いてあります。

ここは2段ベッドのようなスペースにクッションが置かれています。こういうおこもりスペースが実に居心地良いのです。箱根本箱はそういう空間がたくさんあるホテルです。

廊下の突き当りにはOPENと書かれた部屋があります。

中の部屋はこんな感じです。梯子でロフトスペースにいけるのですが、ロフトは閉鎖されてました。

このように館内のいたる所で読書用の空間が創出されているので、とても一日では味わい尽くせません。

こちらは1階のショップです。本以外にも雑貨や食料品が売っています。本はショップでも売ってますが、本棚などで陳列されている本も全て購入可能とのことです。

絵本しかない部屋がショップ内にあります。

ショップではルームウェアが販売されていました。

こちらのルームウェアは自遊人のオリジナル製品で、カットソーとボトム、それぞれ8,000円(税抜)という高級品です。

今回は購入するか少し迷って見送りました・。。でも次回行く機会があったら購入しようかと思ってるくらい、とても着心地良かったです。

地下一階には大浴場とシアターがあります。

シアターではショートフィルムが延々と上映されています。良いセレクションしてまして、この部屋はなにげに面白いなと思いました。あまり長居しませんでしたけど、ここで沈没するのも面白そうです。

箱根本箱、見どころ多すぎて、一度だけでは魅力を味わい尽くせないですね。リピータが多いというのにはうなずけます。

地下1階のエレベータの前付近にあった椅子とテーブルです。

大浴場にある露天風呂です。今回は利用しませんでしたけど、この温泉も良さそうですね。

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夜は、レストランで食事です。

夕食は2部構成となっていて、17:30~、19:45~、どちらかを選択します。

私は19:45~の回を選択しました。それまでの間に部屋の露天風呂に入りましたが、とても爽快でした。温泉宿では食事前にまず温泉に入るのが良いですね。一気に気分が上がります。

夕食は2時間かかると事前に言われてましたけど、実際に行ってみるとびっくり。本格的なイタリアンのフルコースではないですか!!食へのこだわりが半端ないっす。

しかも食事代は宿泊代に含まれています。ですので箱根本箱の宿泊料金はかなりお得と言えます。ただし、飲み物は別料金です。グラスワイン1杯で1500円くらいだったですかね。

夕食の方式は、四角形のカウンターキッチンに宿泊者が一同集められて、同じ料理を味わいます。コストと手間を削減する効率的なスタイルです。席間の距離はあるので、そんなに隣の席は気になりません。また、あらかじめ座席は決められています。

客層を見ると、二人組の客 25% 、ファミリー20%、一人客50%という感じでした。特に女性の一人客が多い印象でした。

これは、強羅の黒たまごですね。サクサクで美味でコロッケのようです。シャンパンとよく似合います、というかお酒と似合います。

全てではありませんが、自分が気に入った料理をあげています。こちらはトリッパ 赤軸のほうれん草です。

もちろん一品ずつスタッフが料理の説明をしてくれます。

北山農園の有機にんじんです。メインより前菜やデザートが美味しかったですね。自分の好みかもしれませんが。

こちらはメインの口直しとして紹介されたニューサマーオレンジ レモンです。このレモンの爽快感はメインを凌ぐほどでした。

個性派ブックホテルと思ってやって来たら、本格イタリアンのフルコースまで付いてきた!。これは嬉しい誤算でした。気分も高揚したので、シャンパンも含めてグラスワイン3杯飲みましたら、結構食事中に酔ってしまいましたね。

アルコールと読書はあまり相性良くないので、フックホテルであまり酔ってしまうのもなんだかなという感じですかね。どちらかと言えばアルコールとは音楽のほうが相性は良いですよねえ。

でも、そこまで酔いは回らなかったです。

翌朝、陽が差し込む本棚の様子です。箱根の山を借景として、清々しい空間が広がっています。

1階からの角度で見る光景です。ちょうど誰もいませんが、いつもは誰かしらいて本を読んでいます。このように誰もいないのは珍しいです。

1階の本棚です。色とりどりのカラフルなソファがいい感じです。

反対側です。本棚はテーマ毎に陳列されていて、食事だったり、美術だったり、服飾だったり、音楽だったり、旅だったり、見ているだけでも楽しいです。

館内で流れているBGMもとてもセンス良いです。リラックスを加速させるような選曲です。

BGMの中で久々に聞いてグッときたのはBill Evance “The Dolphin -Before”という曲です。箱根本箱の空間にあまりにもフィットしていて、このためにこの曲が存在しているのではないかと思われるほどでした。

本棚の中身は感覚的には最新の本というより、少しだけ以前の本が多いかなという感じです。名作が多いという感じですね。

小林秀雄「美と出会う旅」。この本は15年位前に読んで感銘を受けたのですが、箱根本箱で再会しました。

ゴッホの「カラスのいる麦畑」のページを見た時の衝撃は忘れられないですね。アムステルダムのゴッホ美術館まで実物を見に行きましたけど、小林秀雄の本で見たときのほうが衝撃的でした。

同著内のセザンヌの「カルタをする二人の男」。今回はこの絵画が素晴らしく美しいと思ってしまいました。オルセー美術館まで見に行きたいっす。

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こちらは廃墟をテーマにしたコーナーの本棚です。

この中には、かつての愛読書の九龍城探訪が!見つけたときは少し興奮しました。

陰鬱とした雰囲気の写真がたまらない本です。ずっと九龍城に引きこもっている老人の話など生々しい話が盛りだくさん。今はKindle版も出ているんですね。

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朝の食事も予約制です。夜と違って、時間は30分刻みで細かく区切られています。朝朝食は7:00から始まってましたが、既に予約が一杯だったので、私は9:00の回を予約しました。

朝食の様子です。ヘルシーで自分好みの内容でした。

国内旅行をあまりしないから気にしていなかったのだけど、現在使用中のスマホPixel 4 XLはSIMフリーでも小さいながらシャッター音がするのね。レストランで使うと気になります。

SIMフリーのiPhoneは完全無音なので、iPhoneが欲しくなってきました。でも、iPhoneは必要以上に高価だし、今はiOSよりAndroidのほうが使用感は上だと思うんですよね。海外旅行なら海外SIMを使用するのでシャッター音が消えるので、Pixel 4 XLで全然OKなのですけどね。

レストランの前のテラスです。暖かい陽射しのもと、ここでのんびりするのも良さそうですね。今回は2月なのでまだ寒さが厳しいですけど。

テラスから見た風景です。

箱根の山は緑が少なく、風光明媚という感じではないのですけど、なんかホッとするようなものがありますね。

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箱根本箱は雑誌でパラパラ見た程度で、そんなに予備知識がなかったのですが、良い意味で驚きました。ブックホテルと思いきや、本格的な温泉とレストランも楽しめるという。本だけでなく食や宿へのこだわりも極まっています。

大量の本があり、ミニシアターの上映センスも際立っていて、一度の宿泊で全てを堪能するのは時間的に不可能に近く、リピーターが多いというのも納得のホテルでした。

連泊するのも楽しめそうですけど、レストランが一つしかなく、あのスタイルはたまにだから良いのかなという気もするので、ここはあえて1泊で行くのがいいのではと。でも館内のくつろぎ具合を見るに、連泊して知識や思考を深めていくというのにも惹かれます。ただ、料金的に安くはないので、そこが歯止めになりますかね、

本棚の蔵書は新たな本との出会いというのもありますけど、かつて読んでいた本との再会という面の魅力も大きいかなと思います。もっと館内の本をゆっくり見たかった、とは宿泊客の誰もが思うことでしょう。

部屋にテレビがない館内のコンセプトや、レストランで料理を選べないなど、見た目以上に斬新で尖ったホテルであることは間違いないです。細部まで徹底的に突き詰められたファンタジックな世界。地球上を見渡しても類を見ないホテルです。

訪れる前からたぶん面白いだろうなと思ってた期待度は、期待以上に楽しかった、に訪問後に変わりました。箱根本箱、また今度訪れたいです。