新日本人

新日本人

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Kダブシャイン
N.R.G.MUSIC/ATOMIK RECORDS (2016-12-21)
売り上げランキング: 1,693

これはなかなか良いというか、ズバリ素晴らしい。
私は最近KANDYTOWNやKID FRESINOなどを好んで聞いていたが、彼らのモダンなラップ聞いた後にこの新日本人を聞くと、まず音質の違いにびっくりする。だがはまる。K DUBのラップが強力。トラックも強力。K DUB作のトラックも至極良好。
眉唾はいろいろある。

  • M06:文明退化 – 江戸時代からの日本を振り返るラップ。途中で黒船がやってくるところの演出が見もの。和風なトラックも良いセンスしている、と思ったらK DUB作のビート。リリックはパンチラインの連続。「呼んでもいないのに黒船来港」はシリアスなのにユーモアを感じさせる名科白。これぞK DUBの真骨頂。
  • M07:星の砂 – 沖縄をテーマにした曲で、小柳ルミ子「星の砂」をサンプリング、というかまんま使ってる。これがK DUB作のトラックというところが凄い。広く話題になりそうな楽曲だが、あまり話題になってないところが不思議。暫くして火が付くんじゃないか。後年高く評価される曲かもしれません。
  • M11:日本沈没 – 経済についてラップ。これはビジネスパーソン向けヒップホップ。K DUBならではのストーリーテリングが完成度高く、スリリングな韻踏みも相まって、最後までハラハラしながら聞かせてくれる。まさに「お茶の間よりもハラハラ」する。自己憐憫的な展開は、強引に例えれば「スタア誕生」の日本国版。
  • M12:化学反応 – この曲に関してはK DUBもさることながらZEEBRAのプログレッシブなラップにやられる。色気漂う声に、上級者向けの後半のフロー。抑制が効いているところがまた良い。キッズ受けはしないかもしれないけど、これだけでご飯3杯は軽くいける出来だ。

ざっとあげただけでもこんなにある。とある曲の「天才的なラッパー二人も撃たれ」という科白も前段の流れから聞いてると、度肝を抜かれた。

本人がインタビューで「40代後半の人が納得いくようなものを作れたらいいなと思って」というのも納得の大人向けアルバムになった。
私40代後半ではないが、アルバムの出来には納得してしまった。
ボーナストラックでAKLOが出てきたときは、その似合わなさに違和感があったが、マイナスなのはその点くらいか。
だからボーナストラックなんだろうし。AKLOのも曲自体はカッコいいからね。

今作でK DUB SHINEは内省的な内容をラップしない。
日本と社会についてラップしている。それだけで新鮮かつ貴重だ。
大人のヒップホップとはどういうものか、そういうものがあるとすれば、この作品は一つのスタディケースではないか。
批評家風に言えばそんな感じ。
とにかく大人向けのエンターテイメントとして楽しめ。そんなとこかね。
子供の相手は疲れたお父さん方に送る一枚。

お金払う分の価値はある、と思います。