訪問時期:2024年12月
森美術館でルイーズ・ブルジョワ展、ワタリウム美術館で雨宮庸介展を観てきました。
ルイーズ・ブルジョワ展
母親、父親、子供といった自身の家庭環境の経験を基とした、抑圧や鬱屈を表現しています。肉感的で血生臭い匂いのする展示が多い強烈な内容で、各作品の解説が読み応えありました。
母から見捨てられることを極度に恐れており、彼女は私を見捨てた(She abandoned me)と繰り返し歌う映像でのパフォーマンスは鬼気迫るものがありました。そして、同じ空間に展示されているのは前かがみになった巨大なクモのCrouching Spider。「怒りや苛立ちを作品で表現できなければ、その矛先を家族に向けてしまう」と述べ、「芸術は正気を保証する」と言うルイーズ・ブルジョワの悲痛な表現がそこにあります。
六本木ヒルズにある巨大なクモのママンも背景を知ると見え方が変わります。ちょっと思考や感情が家族に影響されすぎじゃないかとも思うのですが、作品は強い個性とエネルギーを放っていますね。
地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわという展覧会のタイトルは展示作品の中から引用されています。鑑賞前は妙なタイトルだと思いましたが、鑑賞後は納得します。
今後ルイーズ・ブルジョワの作品を見る目が変わることは確実のインパクトのある展覧会でした。
この作品は「肝心なのはわたしの意欲がどこから生まれるかよりもどうすればそれが生き延びられるか」と書かれており、作家の内面が窺い知れます。私も感じるところが多い言葉です。
森美術館は何度も訪れていますが、地上約230mという高所にある美術館の凄まじさを改めて感じました。展示空間としては日本最高所らしいですが、世界的に見ても稀有な現代美術館だなと思います。
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
会期:2024.9.25(水)~ 2025.1.19(日)会期中無休
開館時間:10:00~22:00
※火曜日のみ17:00まで
※ただし、2024.9.27(金)・9.28(土)は23:00まで、10.23(水)は17:00まで、12.24(火)・12.31(火)は22:00まで
※最終入館は閉館時間の30分前まで会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
雨宮庸介展
森美術館からワタリウム美術館へ移動。雨宮庸介展を観てきました。
この作家は名前を見かけるとチェックするようにしています。
2階は溶けているりんごの展示、3階はVR作品、4階はアトリエのような創作風景が展示された小上がりおよび石巻13分という濃密な13分の映像作品。どれも見ごたえありました。
石巻13分は最後のクレジットで志人が記載されていて、この大量の言葉の渦の背景が理解できたような気がしました。
そして目玉のVR作品。スタッフの手によってVRゴーグルとヘッドフォンを被らされ、視界と聴覚を完全に別世界に奪われた状況で雨宮庸介の表現が繰り広げられます。このような表現方式があるのかと驚嘆しました。
ちなみにこれをApple Vision Proでやったら解像度が高くてもっと凄いのだろうか、と思うとVRの可能性をひしひしと感じられる作品でした。
そにれしてもVR作品においても浴びせられる大量の言葉の渦に脳がクラクラしました。以前の雨宮庸介の作品と比較して、より言葉に比重が移ってきているようです。
雨宮庸介展は見ている最中よりも鑑賞後により印象深くなるタイプ。会期中は何度も入場できるチケットなので、もう一度くらいは見に行けたらいいですね。
雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館
会期:2024年 12月21日[土]- 2025年3月30日[日]
休館日:月曜日(1/13、2/24は開館)、12/30-1/3
開館時間:11時より19時まで
追記
写真はビルバオのグッゲンハイム美術館に2015年に訪れた時のルイーズ・ブルジョワのママンです。当時は六本木ヒルズと同じ作品だ!くらいの認識しかなかったけど、今回のルイーズ・ブルジョワ展を観てからだとママンの印象は随分変わります。
ママンはステンレスで作成されたものが一つ、ブロンズで鋳造されたものが6つあります。
ステンレス版はロンドンのテート・モダンにあり、残りのブロンズの6つはそれぞれ六本木ヒルズ、オタワ、ソウル、ベントンビル(アーカンソー州アメリカ)、ビルバオ、ドーハにあります。
テート・モダンのママンは訪問時に観たかもしれないけど、記録も記憶もないので不明ですね。